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静岡地方裁判所 昭和27年(わ)485号 判決

被告人 株式会社マスダ至誠堂

右代表者代表取締役社長 増田長次郎 外一名

主文

被告人株式会社マスダ至誠堂を

判示第一の罪に付罰金八拾万円に

判示第二の一の(一)の罪に付罰金弐万円に

判示第二の一の(二)の罪に付罰金四万円に

判示第二の一の(三)の罪に付罰金五万円に

判示第二の二の(一)の罪に付罰金六万円に

判示第二の二の(二)の罪に付罰金三万円に

判示第二の二の(三)の罪に付罰金五万円に

判示第二の二の(四)の罪に付罰金拾弐万円に

判示第二の二の(五)の罪に付罰金三万円に

判示第二の二の(六)の罪に付罰金三万円に

判示第二の二の(七)の罪に付罰金七万円に

判示第二の二の(八)の罪に付罰金七万円に

判示第二の二の(九)の罪に付罰金拾五万円に

判示第二の二の(十)の罪に付罰金弐万円に

判示第二の二の(十一)の罪に付罰金七万円に

判示第二の二の(十二)の罪に付罰金五万円に

判示第二の二の(十三)の罪に付罰金三万円に

判示第二の二の(十四)の罪に付罰金四万円に

被告人増田長次郎を懲役八月に

各処する。

被告人増田長次郎に対しては本裁判確定の日から弐年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人増田長次郎の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社マスダ至誠堂は静岡市八幡本町一丁目四十番地に本店を有し資本金百五十万円で印刷製本及びこれに附帯する業務を営むもの、

被告人増田長次郎は被告会社が昭和二十二年三月二十二日創立と同時に同社の代表取締役社長となり会社の業務を総括処理しているものであるが、被告人増田長次郎は被告会社の業務に関し

第一、法人税を免れようと企て昭和二十四年十一月一日より昭和二十五年十月三十一日までの事業年度における同会社の所得総額の内売上の一部を除外しこれを会社の正規の帳簿に記載せず別途経理とし収益の一部を秘匿し、同事業年度における普通所得金額二、二五六、〇二〇円これに対する法人税額金七八九、六〇七円であるにかゝわらず昭和二十五年十二月三十一日静岡市追手町所轄静岡税務署に於て同税務署長に対し右事業年度分の普通所得金額三〇八、五〇〇円法人税額金一〇七、九七五円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し因て不正に法人税金六八一、六三二円を逋脱し

第二、被告会社の重役、従業員に対する給料、賞与等の給与の内一部給与については所得税の源泉徴収をしないことゝして、被告会社の支出を増加せずして実質給与額の増加をしようと企て所謂二重伝票を作成して

一、(一) 昭和二十五年一月中被告会社に於て増田長次郎外六十五名に対し四四二、七三四円を支給するに際し正規の所得税四三、二五四円の内二〇、〇二二円を源泉徴収しなかつた

(二) 同年二月中前同所に於て増田長次郎外八十五名に対し七一一、〇三三円を支給するに際し正規の所得税八〇、四九四円の内三七、五八九円を源泉徴収しなかつた

(三) 同年三月中前同所に於て増田長次郎外九十三名に対し七四〇、七六八円を支給するに際し正規の所得税八〇、四三六円の内四三、五八一円を源泉徴収しなかつた

二、(一) 同年六月中前記静岡税務署に於て被告会社が同年四月中増田長次郎外百十六名に支給した給与額合計九二八、四八二円に対する源泉所得税納付に際し正規の所得税は七九、〇九九円であるに拘らずその内合計四五、二四一円を納付しなかつた

(二) 同年七月中前同所に於て被告会社が同年五月中増田長次郎外百二十名に支給した給与額合計八四五、八六八円に対する源泉所得税納付に際し正規の所得税は三五、二九四円であるに拘らずその内合計一九、七九八円を納付しなかつた

(三) 同年八月中前同所に於て被告会社が同年六月中増田長次郎外百十七名に支給した給与額合計八九一、〇一一円に対する源泉所得税納付に際し正規の所得税は七七、八一五円であるに拘らずその内合計四〇、六一〇円を納付しなかつた

(四) 同年九月中前同所に於て被告会社が同年七月中増田長次郎外百十八名に支給した給与額合計一、〇七七、七〇八円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は一一五、六三一円であるに拘らずその内合計八〇、四七〇円を納付しなかつた

(五) 同年十月中前同所に於て被告会社が同年八月中増田長次郎外百十六名に支給した給与額合計八〇二、一九五円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は六一、二九九円であるに拘らずその内合計二二、三〇四円を納付しなかつた

(六) 同年十一月中前同所に於て被告会社が同年九月中増田長次郎外百十四名に支給した給与額合計八〇九、九五六円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は六三、〇七二円であるに拘らずその内合計二二、三八一円を納付しなかつた

(七) 同年十二月中前同所に於て被告会社が同年十月中増田長次郎外百十二名に支給した給与額合計八九三、八〇六円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は九〇、一三六円であるに拘らずその内合計五〇、二九一円を納付しなかつた

(八) 昭和二十六年一月中前同所に於て被告会社が昭和二十五年十一月中増田長次郎外百十二名に支給した給与額合計一、〇二四、五四七円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は一〇八、一四八円であるに拘らずその内合計五二、二六四円を納付しなかつた

(九) 昭和二十六年二月中前同所に於て被告会社が昭和二十五年十二月中増田長次郎外百十三名に支給した給与額合計一、二三二、七六六円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は一一〇、六二九円であるに拘らずその内合計一〇二、八九五円を納付しなかつた

(一〇) 昭和二十六年四月中前同所に於て被告会社が同年一月中増田長次郎外九十六名に支給した給与額合計七三二、一九一円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は四五、八七六円であるに拘らずその内合計一七、〇七二円を納付しなかつた

(一一) 同年五月中前同所に於て被告会社が同年二月中増田長次郎外九十七名に支給した給与額合計一、〇一〇、一〇三円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は一〇五、一八〇円であるに拘らずその内合計五三、八七二円を納付しなかつた

(一二) 同年五月中前同所に於て被告会社が同年三月中増田長次郎外九十七名に支給した給与額合計八五三、〇七三円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は七三、八六五円であるに拘らずその内合計三五、一一二円を納付しなかつた

(一三) 同年六月中前同所に於て被告会社が同年四月中増田長次郎外九十八名に支給した給与額合計八六二、七三五円に対する源泉徴収所得税納付に際し正規の所得税は六四、二九八円であるに拘らずその内合計二二、一五九円を納付しなかつた

(一四) 同年六月中前記被告会社に於て同会社が同年五月中増田長次郎外九十四名に支給した給与額は合計八一一、七五八円でその所得税は合計六七、九四九円であるに拘らず給与額合計六六三、三五一円その所得税合計三九、一四四円を源泉徴収簿に記載して納付すべきものとし差額の給与額合計一四八、四〇七円その所得税合計二八、八〇五円を納付しなかつた

ものである。

(証拠の標目)〈省略〉

検察官は被告会社の当期犯則所得は国税局調査額二、七七一、〇一三円(検察官に対する本多一郎の供述調書末尾添付上申書第八号参照)より裏勘定に対する借入利子申告分二三三、六七二円を差引いた金二、五三七、三四一円である旨(第十回公判調書参照)主張するに対し、弁護人は被告会社には当期諸未払金合計一、三三七、四六一円あり、これを損金として右犯則所得より差引いた金一、一九九、八八〇円が当期犯則所得である旨(昭和二八年七月一七日被告会社主張要旨参照)主張するから以下順次この点について判断する。

(一) 未払事業税等について

弁護人は被告会社の犯則事業年度の総損金中に昭和二十二年度同二十三年度分未払事業税合計二七七、〇三九円を加算すべき旨主張する。

しかしながら弁護人主張の昭和二十二年十一月一日より同二十三年十月三十一日、同二十三年十一月一日より同二十四年十月三十一日分の両事業年度の所得に対する事業税賦課に付適用せられる昭和二十三年七月七日法律第百十号旧地方税法第十八条第十九条によれば事業税同附加税は県又は市町村長より納税義務者に徴税令書の交付のあつたときが賦課税額確定の時であると解すべきところ、弁護人提出の徴税令書写によれば右両年度分の事業税については、静岡県より昭和二十六年六月二十六日同附加税については静岡市より同二十六年七月十五日に夫々発行されており、昭和二十五年十月三十一日の被告会社の犯則事業年度の決算末現在においては賦課税額は未確定であつたものであるから、標準税率を基として算出し当事業年度の損金に計算認容した額と右確定額との差額二七七、〇三九円は決定のあつた日又は納付のあつた日を含む事業年度即ち昭和二十五年十一月一日より同二十六年十月三十一日に至る事業年度分経費として計算すべきものであり、これを遡つて本犯則事業年度分の経費として損金に算入すべきものであるとの弁護人主張は採用しない。

(二) 諸未払金について

弁護人は当事業年度分損金中に算入せらるべき諸未払金として昭和二十五年度固定資産税、昭和二十五年九月十月分失業保険料、昭和二十五年九月十月分健康保険料、昭和二十五年九月十月分年金保険保険料、昭和二十五年十月分営業電燈料工場電燈料各未払経費合計一三一、六〇一円がある旨主張する。

しかしながら弁護人主張の右諸未払金はいづれも被告会社は現実支払の日に表帳簿に損金記帳をしており、且つ会社決算に当りその現実支払日を含む事業年度分経費として計算し法人税の申告納税をしている。これらの経費はいづれもその性質上毎事業年度繰り返し支払はれるものであつて、記帳経理の方法等に徴して被告会社の従来よりの慣行に従つて現実に費用の支出された日を含む事業年度の損金に計上したものであり、突如として所謂発生主義に基きこれを犯則事業年度の損金であるとする弁護人の主張は是認せられない。

(三) 交際費および旅費について

次に弁護人は被告会社の犯則事業年度分損金中に算入すべき交際費および旅費として社長分二九五、五六〇円専務取締役分一七二、〇八〇円がある旨主張する。

被告会社は事業年度分の営業費勘定中に旅費として表帳簿に金一五四、二四六円を計上し、この分については認容せられたものであるが、第七回公判調書中証人柳川太郎、同本多一郎の各供述記載被告人増田長次郎の供述記載第六回公判調書中証人遠藤弘子、同岩崎藤作、同増田房吉の各供述記載と被告会社の総売上金額、簿外益金額、事業の性質等諸般の事情を考慮するときは、右弁護人主張のうち社長分旅費として、東京出張年二十四回一回分二、六八〇円、名古屋出張年七回一回分二、七二〇円、富士町出張月三回一回分二〇〇円、専務取締役分旅費とし、東京出張年六回一回分二、六八〇円、富士町出張月五回一回分二〇〇円以上合計一二八、六四〇円を帳簿上計上洩れとなつている損金として認容すべきものである。

尚弁護人は社長分交際費一九五、〇〇〇円専務取締役分一四四、〇〇〇円を損金として認容すべき旨主張するけれども被告会社の経費であることの明細を具体的に明かになし得ないから、損金として認めることはできない。

(四) 借入金利子、電話賃借料、土地賃借料について

弁護人は被告会社がその事業資金の必要から社長個人、専務取締役増田房吉個人より借受けた金員に対する支払利子額一七五、五八一円、被告会社が増田長次郎個人所有の電話静岡第二三九五番を同人より借り受け被告会社の営業用に使用していた電話加入権借受料金年額三六、〇〇〇円、被告会社工場の敷地として増田長次郎所有の静岡市八幡本町一丁目六ノ八宅地七〇一坪四合八勺の内五三二坪八合八勺の当事業年度地代年額一五、九三三円一一銭は何れも記帳洩のところ被告会社としては当然貸主に支払うべき関係の経費であり法人税法第九条の所得の計算上当然損金に含まるべき性質のものである旨主張する。

しかして前記証拠の標目欄掲記の各証拠を綜合するときは被告会社が増田長次郎個人よりその所有土地である静岡市八幡本町一丁目六ノ八番地七〇一坪四合八勺の内五三二坪八合八勺を借受け被告会社の工場敷地として使用していること、右同人所有の電話静岡第二三九五番を同人より借受け被告会社の営業用に使用していたこと、被告会社がその事業資金の必要上社長増田長次郎個人、専務増田房吉個人より金員を借受けていたこと(証八号勘定帳より認め得られる各月の残高は弁護人提出の昭和二十八年五月一日付事実陳述書末尾添付の借入金及利子明細その一のとおりである)が認め得られるところであり、企業所得の計算上企業自体と企業主との関係は全く独立する第三者間の関係と同様に考えるべきであるから、被告会社と増田長次郎等個人との前記貸借関係においても前者が後者に支払はなければならぬ利子賃借料は当然被告会社の経費として損金に算入すべきものであり、しかして右工場敷地借地料は一五、九三三円一一銭(昭和二五年八月十五日物価庁告示第四七七号による同年七月三一日現在における地代の統制額)電話加入権借受料は三六、〇〇〇円(第八回公判調書中鑑定人今村よ志の供述記載)借受金利子は一七五、五八一円(その計算関係は前記事実陳述書末尾添付の借入金及利子明細その二のとおりである)となるから以上合計二二七、五一四円は貸主に支払うべき関係の経費として当然損金に算入されなければならない。

(五) 未払給料工賃関係について

弁護人は被告会社は犯則事業年度の前期分迄は毎月二十五日締切で給料工賃の計算をしたのを、その翌期である当犯則事業年度からは給料工賃の計算期間を改めて毎月二十日締切計算としたため犯則事業年度の期末とその前期々末との間には給料工賃の未払日数に五日間分総計二三三、六六七円の差が生じ、前期に比し五日分丈け未払分が多くなつているから、右未払額は犯則事業年度の損金に算入すべきである旨主張する。

第六回公判調書中証人遠藤弘子の供述記載によれば被告会社は従来毎月二十五日締切で給料工賃の計算をしてきたが犯則事業年度からは給料工賃の計算期間を改め毎月二十日締切計算とし、これを各その月の末日に経費として記帳経理したことが認められる。

従つて犯則事業年度の期末に至りその前期との間に給料工賃未払日数に五日間の差を生じたものであつて少くとも右五日分の未払金は期間損益計算の正確性からみて当犯則事業年度の損金として計上するのが正当と考えられる。

しかして証第一九号の一、二、同第二〇号の一〇、一一、同第八号同第二三号により算出せられる昭和二十五年十月二十一日より同年同月三十一日までの未払給料工賃三五八、〇九一円二〇銭と前期期末昭和二四年十月分未払給料即ち同月二十六日より同月三十一日までの分一二四、四二四円一七銭の差額二三三、六六七円三銭が未払給料工賃として犯則事業年度の損金として加算すべきものである。

以上弁護人主張の各脱漏損金の内旅費一二八、六四〇円借受金利子電話賃借料土地賃借料合計二二七、五一四円未払給料工賃二三三、六六七円三銭以上合計五八九、八二一円を犯則事業年度の損金として認容すべきものであり前記検察官主張の犯則所得二、五三七、三四一円より五八九、八二一円を控除した一、九四七、五二〇円が被告会社の当事業年度における犯則所得と認むべきものである。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は本件法人税法違反については昭和二十七年政令第一一七号第一条第十三号により昭和二十五年四月一日前に終了したとみなされる事業年度分については赦免されるものと考える旨主張する。

しかしながら右政令第一一七号第一条第十三号により赦免されるのは昭和二十五年四月一日前に終了した事業年度分の法人税に関する罪であり被告会社の犯則事業年度は昭和二十四年十一月一日に始り同二十五年十月三十一日に終了するものであるから右四月一日以前に終了していないことは明白である。尚右十三号所定の二十五年四月一日以前に終了した事業年度というなかには同号規定のとおり昭和二十五年法律第七十二号による改正前の法人税法第二十一条の規定により一事業年度とみなされる期間をも含むことは弁護人主張のとおりであるが、被告会社の事業年度は同会社定款第二十三条に定めたとおり六箇月を超える場合にあたるけれども、右法定事業年度開始の日は同条所定のとおり昭和二十四年十一月一日であり同二十五年四月一日以前に一事業年度とみなされる期間である六ヶ月を経過していないことも明白であるから弁護人の右主張は採用しない。

(法令の適用)

法律に照すと、被告人増田長次郎の判示第一の所為は昭和三十二年三月三十一日法律第二八号法人税法附則十六項昭和二十九年三月三十一日法律第三八号附則九項により適用せられる昭和二十五年三月三十一日法律第七二号法人税法第四十八条第一項に、判示第二の一の(一)乃至(三)の所為は昭和三十二年三月三十一日法律第二七号附則第三十二項同二十九年四月一日法律第五二号附則第二十二項同二十五年三月三十一日法律第七一号附則二十一項により適用せられる昭和二十二年十一月三十日法律第一四二号所得税法第六十九条第二項に判示第二の二の(一)乃至(一四)の所為は昭和三十二年三月三十一日法律第二七号附則第三十二項同二十九年四月一日法律第五二号附則第二十二項により適用せられる昭和二十五年三月三十一日法律第七一号所得税法第六十九条の三第一項に各該当するところ、以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから所定刑中各懲役刑を選択し同法第四十七条本文第十条に則り犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重を為した刑期範囲内に於て被告人増田長次郎を懲役八月に処し、被告人株式会社マスダ至誠堂に対してはその代表者である被告人増田長次郎が前記の如く被告会社の業務に関し前記各法条に該当する違反行為を為したものであるから、前記法人税法第五十一条、昭和二十二年法律第一四二号所得税法第七十二条同二十五年法律第七一号所得税法第七十二条に則り、前記法条各所定の罰金刑を科すべく、前記法人税法第五十三条本文、前記各所得税法第七十四条本文に則り、各所定金額の範囲内に於て被告会社を主文第一項掲記の各罰金に処する。

尚被告人増田長次郎については、判示認定の如く、二重帳簿を使用して所得を隠匿し、実際の所得に比し極めて少額の所得を申告し、著しく所得申告の義務に背き悪質の犯行と認められるが、本件発覚後に於てはその非を悟り、その逋脱した法人税及び源泉所得税の本税、加算税、重加算税合計二百八十万円余を昭和二十八年一月頃迄に完納しており、改悛の情認められ、而して被告人の犯行に因り被告会社に対し合計罰金百七十三万円に処すればこれを以て他戒の目的も達せられるものと認められるから、被告人増田長次郎に対し刑の執行を猶予するを相当と認め刑法第二十五条第一項に依り、本裁判確定の日より弐年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用の負担については刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に則り全部被告人増田長次郎の負担とする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 矢部孝)

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